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手、足、口に(子どもの場合は肘、膝、お尻にも)米粒ほどの水疱性の発疹ができます。
発疹は水疱状で、やがて破れて潰瘍になり、痛痒くなってきます。
口の中にできると、痛みで食事が困難になり、脱水症状を起こすことがあります。
発熱や下痢、嘔吐をともなうこともあります。
嘔吐や頭痛が続く場合、心筋炎や髄膜炎を合併していることもあります。
エンテロウイルスなどの腸管ウイルスやコクサッキーウイルスなどの感染。
複数のウイルスがあるので、一度かかったら大丈夫、という病気ではありません。
感染経路は、風邪と同じように鼻汁・唾液などからの感染です。
また、便からも感染しますので、お子さんの手をよく洗うことも大切ですので、お母様は気をつけてあげてください。
比較的軽い病気ですので、自然に治ります。
しかし、口の中の痛みや発熱が強い場合は症状を緩和する対症療法をおこないます。
口腔内の痛みのために食事が困難な場合は脱水症状を起こしやすい状態にありますので、刺激が少なくのどごしの良い食事内容にし、また水分補給を十分におこないます(参考:「健康Salad」手足口病の時のおすすめレシピ<すいとん>)
急な発熱(38~40℃)、のど腫れや痛み、リンパ節の腫れ、目やに、涙、充血など結膜炎の症状がみられます。
吐き気、腹痛、下痢などが見られることもあります。
アデノウイルスが感染の原因です。
プールの水から感染することから、「プール熱」とも呼ばれます。
6~9月頃に発生しやすく、幼稚園児や小学生はプールでうつることが多いのですが、せきやくしゃみを介して感染したり、
便を介して目や口に感染して、赤ちゃんが感染することもあります。
プールに入る前と後にシャワーでよく体、手、目を洗うことと、タオルや洗面器、食器を共用にしないことです。
また、洗濯も別にします。
眼科を受診します。
症状を和らげる対症療法を行います。
高熱の場合は小児科を、結膜炎の症状がある場合は眼科での治療が必要です。
急な高熱(39℃前後)と咽頭、口の中の上顎の奥の粘膜に、小さな水疱ができます。
水疱が破裂し潰瘍状になることもあります。
5歳未満の乳幼児に多く、食欲低下、嘔吐する場合もあります。
おもにコクサッキーウイルスへの感染が原因ですが、原因となるウイルスは複数種類あるため、 何度も発症することがあります。
対症療法を用います。
症状が重い場合は解熱剤を服用するなど症状を和らげます。
口腔内の痛みで食事が難しい場合がありますので、食事内容はやわらかくのどごしの良いものを。
また脱水症状への注意も必要ですので、水分補給をこまめに行います。
急な発熱(38~40℃前後)と頭痛、のどの痛み、食欲不振、吐き気など、風邪のような初期症状があります。
やがてのどが非常に赤くなり、舌の表面にブツブツの赤みができることが多く(いちご舌)、口の中も真っ赤になります。
また扁桃腺や首のリンパ節が腫れたり、扁桃腺に白~黄色がかった膜ができることがあります。
他におう吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、首のリンパ節が腫れて痛むことも。
発症後1~2日すると、かゆみをともなう小さな発疹が全身にあらわれます。
A群β溶血性連鎖球菌が原因の溶連菌感染症です。
A群β溶血性連鎖球菌という細菌が、くしゃみやせきを介して感染しておこります。
5歳をピークに4~9歳がかかりやすく、秋から春に多く発症します。
のどは12~3月に、皮膚では7月~9月に多い傾向にあります。
抗生物質を服用します。
服用後、1~2日で元気になったように見えて溶連菌を完全に除く前に服用をやめてしまい再発することが多く、中耳炎・気管支炎・リンパ節炎・副鼻腔炎、急性腎炎、リウマチ熱を合併する危険度が高くなります。
医師の指示通りの治療を最後まで続けることが大切です。
毎年12月から3月にかけて決まったように流行するのがインフルエンザです。
インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスが活動しやすい環境は、摂氏20度前後、湿度20%前後ということがわかっています。
冬季は、特に湿度が低いという点でこのウイルスが活動しやすくなる季節といわれています。
また、冬季は身体も細菌やウイルスに侵入されやすい状態になると考えられています。
1.空気中に含まれるウイルスやゴミ、細菌などの異物が気道(呼吸時の空気の通り道)の表面を覆っている粘液に付着します。
2.気道の表面を覆う繊毛(せんもう)細胞の働きで粘液を外へ外へと送り出し、痰(たん)として排出する繊毛運動がウイルスの侵入を防ぎます。
*寒い時期は体温を保つため血管が収縮し、気道粘膜の血流も悪くなり、繊毛運動の働きが低下します。
その結果、ウイルスが侵入しやすい状態を招いてしまいます。
厚生労働省は国民の健康に影響を及ぼす恐れのある重要な感染症※について、その発生を監視しています。
定められた医療機関では、インフルエンザが発生した場合、診断した医師が厚生労働省に届け出ることになっています。
インフルエンザを重症の風邪と考えている人も多いでしょうが、実は国家的な規模で監視を行う必要のある重要な感染症の1つなのです。
※インフルエンザウイルスなどの微生物を病原体と呼び、こられの病原体が体に入ることで起こる病気のことを感染症と言います。
インフルエンザウイルスに感染すると、1~3日間の潜伏期間後発病し、高熱(38~40度)とともに悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状が現れます。
また鼻水、喉(のど)の痛みや胸の痛みを伴うこともあります。発熱は3~7日間程度続きます。
一般的な体力のある大人であれば、1週間ほどで回復に向かいます。
これは、体の中の免疫機能が働いて、ウイルスに対する抗体ができたことによります。
インフルエンザの症状は、普通の風邪とよく似ていますが、1つ1つの症状を比べていくと違いがはっきりします。
風邪は、鼻や喉などの症状が強いのに対し、インフルエンザは悪寒、発熱、関節痛などの全身症状が急激に現れます。
インフルエンザ | 風邪 | |
初期症状 | 悪寒、頭痛 | 喉の痛み、くしゃみ、鼻水 |
主な症状 | 発熱(38~40度)頭痛、悪寒(重度) 筋肉痛、関節痛、 倦怠 (けんたい)感(重度)、下痢、腹痛 | 発熱(軽度) 鼻水、鼻づまり、悪寒(軽度)、倦怠感(軽度) |
その他 | 感染は短期間で急激に拡がる。 肺炎などを併発して重症化することがあり、高齢者では死亡率が高くなる。 | 感染は、徐々に拡がる。 重症化することは少ない。 |
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3種に分けられます。人に感染して問題を起こすのは、このうちA型とB型のウイルスです。
特に、A型ウイルスは非常に変異しやすく、10年~30年ごとに大流行することが知られています。
C型ウイルスは変異がほとんどみられず、安定した性質のため、感染しても病気になることはめったにありません。
現在のインフルエンザの検査は、迅速(じんそく)診断キットを利用し、15分くらいで判定ができるようになりました。
鼻や喉の粘液を採取するだけで済むため、患者さんの負担も軽くなっています。
インフルエンザウイルスの迅速診断キットを利用すると、ウイルス感染の有無ばかりでなく、感染したウイルスがA型かB型かということまで判定ができます。
A型かB型かを判定することは、治療薬を選ぶ上で重要です。
インフルエンザは、普通の風邪よりも重い症状ですが十分な体力があれば免疫機能が働いて自然に治ります。
しかし、体力の落ちている高齢者や、成長途上で免疫機能が未熟な小児の場合、危険な合併症を起こすことがあり、できるだけ早いうちに病院で受診することが必要です。
インフルエンザの治療には、家庭での「一般療法」、薬での「対症療法」と「化学療法」があります。
体力の低下を防ぐため、安静にして睡眠と栄養を十分にとります。
室内を乾燥させないようにして(湿度60~70%が目安)、インフルエンザの活動を抑えます。
水分を十分にとって脱水症状を起こさないように気をつけます。
発熱や関節痛、頭痛などには解熱鎮痛剤。
鼻水やくしゃみには抗ヒスタミン剤。
咳(せき)には咳止め。
痰には去痰(きょたん)剤を使います。
一方、インフルエンザの症状はインフルエンザウイルスに対する体の自然な抵抗なので、薬で抑えると逆効果になることがあります。医師の指導のもとで、慎重に治療する必要があります。
インフルエンザウイルスに有効な抗ウイルス薬が開発されて、現在では特効薬といえるものが登場しています。
ただし、どの抗ウイルス薬も発病後48時間以内に服用しないと十分な効果が得られないため、インフルエンザかもしれないと思ったら、できるだけ早いうちに病院でウイルス検査を受ける必要があります。
■特徴■
・A型、B型インフルエンザウイルスに有効
・発病後48時間以内の服用で有効
・内服薬と吸入薬、点滴がある
※副作用は少ないとされる
インフルエンザにかからないようにするためには、流行する前にワクチン接種を受けておくことです。
ワクチン接種をした全ての人の感染を100%防げるわけではありませんが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても軽い症状で済むというメリットがあります。
日本では、毎年どのようなタイプのインフルエンザウイルスが流行するか予測し、それに対して有効なワクチンを準備しています。
厚生労働省は、特に65歳以上の高齢者に対して積極的にインフルエンザワクチンの接種を勧めています。
アメリカでは、乳幼児に対しても高齢者同様にワクチンの接種を勧めています。
ただし、卵アレルギーのある場合は医師に相談してください。
インフルエンザワクチンは製造過程で卵を使用しているため、アレルギーを起こす恐れがあります。
ワクチンは、接種してから効果が現れるまでに約2週間かかり、効果の持続は約5ヵ月と考えられています。
インフルエンザの流行が12月からとすれば11月までに接種を済ませておいたほうがよいでしょう。
ワクチンは、1~4週間の間隔を置いて2回接種するのが原則です。
しかし、「65歳以上」「昨年予防接種をしている」「近年、インフルエンザにかかったことがある」人は、1回の予防接種でも十分な効果が得られるといわれています。
接種回数を1回にするか2回にするかは医師にご相談ください。
2004年の7月からノイラミニダーゼ阻害薬の1つ「オセルタミビル」の予防投与が承認されるようになりました。
原則として、インフルエンザ患者と同居している家族、あるいは共同生活を行っている人で次のような条件を満たすことが必要です。
●65歳以上の高齢者 ●慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者 ●代謝性疾患患者(糖尿病など) ●腎機能障害患者 |
※家族がインフルエンザウイルスに感染しても健康な成人では、抗ウイルス薬の予防投与は認められていませんので、ご注意ください。
うつ病は女性なら5人に1人、男性なら10人に1人が、一生のうち一度はおちいる非常によく起こる病気です。
うつ病の症状は、「身体の症状」と「心の症状」にわけられます。
不眠がうつ病の9割以上に見られる症状で、特に途中で目が覚める不眠がよく起こります。
さらに、不眠の状態が続くとうつ病が起こる可能性が高いこともわかっています。
また、食欲も落ち、体重が減ってしまうことがあります。
その他には、疲れやすい、口が渇く、便秘や下痢、めまいやふらつき、動悸、息切れといった、いわゆる「自律神経症状」を伴うこともよくあります。
ゆううつで落ち込んだ気分となり、涙もろさや寂しさを引き起こします。
さらに、今まで興味を持って取り組めた事柄に興味がなくなり、楽しくなくなります。しかも、自分を「だめな人間だ」と強く思い込んでしまうこともあり、その結果、「自分などこの世にいらない」と自殺を考え出してしまうことがあります。いずれの症状も、自分や周囲の環境を実際以上に否定的にとらえてしまうということが、根本にあります。
これらの症状は、朝に症状が強く、夕方になると少し楽になるということもよく起こるため、家族の方は帰宅後の様子を見て、「たいしたことない」と誤解してしまうこともあります。
うつ病になる人は、几帳面で徹底的にやらないと気が済まないタイプの人が多いようです。このような人の落とし穴は、環境の変化に柔軟に対応できにくいという傾向があります。
また、他人との関係を重視するあまり、ついつい断りきれずに多くの仕事を「一人で抱え込んでしまう」ことになります。
したがって、うつ病のきっかけとなる環境の変化としては、昇進、転勤、配置換えなど、それまでと違った役割を果たす必要が生じたときが挙げられます。
特に「どこまでが自分の役割かわからない」とか、「同時にいくつかの役割が割り振られた」という状況では「あれもこれも今やらなければならない」といったことになりがちです。
さらに、それらの悩みを誰にも相談できずに一人で抱え込むと、「まわりのサポート不足」となってしまいます。
その結果、「脳(心)のエネルギー」が不足し、「否定的なものの見方」が顔を出し、普段なら苦にならないことまでが苦になってきます。
したがって、「ストレスは実際以上に大きく」、「まわりのサポートは役に立たない」と思えてしまうため悪循環になり、うつ病の発病につながることが多いようです。
うつ病の症状でもある「否定的なものの見方」のため、「医者にかかってもどうしようもない」と思う人も多く、「適切な医療を受けていない」傾向があります。
しかも、うつ病から自殺をしてしまった人々の多くも、専門医を受診されていないということがわかっています。
また、ものの見方が否定的になると「自分は不必要な人間だ」などといった考えに結びつき、辞職や離婚などにつながり、結果的に本人を取り巻く環境が悪化してしまいます。したがって、早めに治療を開始することが大切です。
もし、うつ病の可能性に周囲が気づいたときは、本人が「否定的なものの見方」のせいで「医療受診は気が進まない」ことを念頭におきながら、医療受診を勧める必要があります。その際、本人が困っていて、医療受診につながりそうな話題、例えば「不眠」をきっかけに受診を勧めることもひとつの方法です。
うつ病の治療の原則は、「服薬」と「休息」です。
「服薬」に関しては、抗うつ薬という薬を中心にして、睡眠導入剤や安定剤を必要により追加します。
現在、日本を含めて世界中でよく使われているのは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンに働きかけるSSRIとSNRIと呼ばれるタイプです。
薬のタイプ | 副作用 | |
SSRI | セロトニンの利用を高め、脳の働きを改善する | 吐き気 |
SNRI | セロトニンとノルアドレナリンの利用を高め、脳の働きを改善する | 尿の出が悪い |
三環系 | 以前から使用されていた薬で、ノルアドレナリン中心に セロトニンにも作用し脳の働きを改善する | 口が渇く、便秘が起こる、尿の出が悪い、頭がぼんやりする |
効き目や副作用の出やすさには個人差がありますので、少量からスタートしてその人にあった薬の量と種類に合わせることが重要です。
また、抗うつ薬は効果が出るのに、1~2週間かかるという特徴があります。
一方、睡眠導入剤や安定剤は飲み始めてすぐに効果が出るので、治療の最初は、このような薬を併用して、不眠やイライラを軽くし、薬の効果を実感していただきます。
「こころの休息」を十分に確保しておくことが重要です。
「こころの休息」のためには、こころの負担になっている事柄(ストレス)、例えば仕事を一度休む、ということが必要になります。
しかし、「身体の休息」をとるのと異なり、仕事を休んでいても、休むことを苦にしながら休んでいたのでは、「こころの休息」にはなりません。
したがって、本人が「今はしっかり休むべき時期だ」ということを理解して休むことが必要です。「こころの休息」がとれた結果、不安、イライラ、ゆううつな気分が薄れ、おっくうな感じだけになった頃から、徐々に社会復帰に向けたリハビリに入ります。
具体的には、睡眠と覚醒のリズムを整え、通勤や書類整理のリハビリのために図書館へ通うといった方法をとります。
一方、この段階で先のことばかり考えて焦らず、今の自分の状態を確認しながら、現在の目標と先の目標を見定めて進むことが大切です。同時期に、うつ病のきっかけになったストレスを整理し、今後のストレスに対する対処方法を確認しておくことが重要です。中でも、「一人で問題を抱え込まない」ために「周囲に相談する」ことを習慣づけることが再発を防ぐために重要です。
何よりも、治療にあたって、本人と周囲がうつ病に関する正しい知識を持つことがとても重要です。
急性中耳炎は、3歳までに約70%の子どもが少なくとも1回はかかるといわれています。通常、耳の痛みや発熱の症状を急に訴えることが多いのですが、乳幼児では言葉で伝えることができないので、耳をよくさわる、不機嫌、食欲が落ちるなどの行動に現れます。急性中耳炎は熱が出る乳幼児の病気としては最も頻度の高いもののひとつですので、2歳以下の乳幼児の発熱では、まず急性中耳炎を疑う必要があります。
急性中耳炎の約80%は肺炎球菌とインフルエンザ菌という細菌により起こります。
最近ではこれらの細菌の50~70%が抗生物質の効きにくい薬剤耐性菌になっており、子どもの急性中耳炎が治りづらくなっています。
したがって、適切な抗生物質の選択が非常に重要です。
急性中耳炎治療では、まずペニシリンというくすりを使います。
しかし、すでに1ヵ月以内に抗生物質を使ったことがある、中耳炎を繰り返している、保育園に通園中などの子どもはくすりが効きにくくなっている可能性が高いので、ペニシリンやオーグメンチンなどを、通常量の1.5~2倍に増やします。
それを3~5日のんでも効果がなければ、くすりの種類を変える必要があります。
子どもの耳と鼻をつなぐ耳管は、大人よりも太く、短く、水平に延びているため、風邪をひいた後、鼻の奥の細菌が増殖すると、耳管を通じて中耳炎を起こしやすくなります。
したがって、風邪をひいた後は中耳炎の症状に注意してください。
また、鼻水をたらしている子どもは中耳炎にかかりやすく、治りにくくなるので、鼻をかむようにさせましょう。
乳幼児では、家庭でも市販の吸引器で鼻水を吸い取ってあげることが大切です。